現代のビジネス環境では、人工知能（AI）が広く利用されており、これにより労働時間が削減され、生産効率が向上していることが観察されています。
「企業におけるAIの活用が拡大すると、事務職の仕事は減少する」という意見がしばしば聞かれます。
特に総務部門は、主に事務処理の職務で構成されていますが、AIの進展によりその将来がどうなるのか、疑問が浮かびます。
本稿では、AI技術の現状、企業における実用事例、総務部門の主な業務内容に焦点を当て、AIによって総務職が取って代わられる可能性について考察します。
「AIの導入で自分の仕事がなくなるかもしれない」と懸念している方々に、この記事を最後までお読みいただければと思います。
AI技術の現状と企業における活用事例
人工知能（AI）とは、Artificial Intelligenceの略で、一般に「人工知能」と訳されます。
経験をデータとして学習し、求められた結果を算出したり、分析や予測を行うシステムを指します。
繰り返し行う単純な作業を自動化することや、膨大な画像、音声、テキストデータを分析する能力に長けており、人間の処理能力をはるかに上回る性能を発揮します。
総務省の2021年のレポートによると、AIを導入している日本企業は全体の約24.3%にのぼるとされています。
ソニービズワークスが行った「AI導入状況調査」によれば、以下のような結果が明らかになっています。
AIを導入済みの企業の約6%が、過去3年以内にAIを導入
AIによって行われている業務のうち、最も多いのは「需要予測、販売予測」（約8%）、次いで「顧客分析、営業活動の効率化」（約36.6%）、「在庫最適化」（約33.2％）
AI導入による効果としては、4割以上が「作業時間の削減」、3割以上が「生産性の向上」と回答
運用に関する課題としては、約半数が「AIを最大限に活用できていない」とし、約3割が「運用できる人材不足」と答えている
さらに、企業におけるAIの具体的な活用事例として、以下のようなケースがあります。
- 製造業や小売業での需要予測
- 食品工場における画像認識・解析を用いた不良品の検出
- 物流業におけるデータ分析を活用した配送ルートや車両数の最適化
このように、多岐にわたる業界でAIの活用が始まっていることがわかります。
AIの導入がどう影響するか
現在、企業の総務部門ではさまざまな業務が行われていますが、人工知能（AI）の進化によってこれらの業務はどのように変わっていくのでしょうか。ここでは総務部門の主要な業務を掘り下げてみます。
総務部門の主要な業務としては、以下が挙げられます。
- オフィス用品や備品の管理（例：事務用品、消耗品、電子機器など）
- 施設管理（例：安全監視、清掃、設備メンテナンス等の業者対応）
- 社内外イベントの企画・運営（例：入社式、株主総会など）
- 電話応対や来客対応
- 各種書類の作成・管理（例：発注書、請求書、内部文書、契約書など）
- 小規模な企業では、人事や経理業務を兼務することも
これらの業務は、日々の企業運営の根幹に関わるものであり、多岐にわたっています。
では、これらの業務の中で、将来AIに置き換わる可能性があるものはどれくらいあるのでしょうか。
AIは、繰り返される単純な作業や人間の感情が関係しない作業に特に有効です。
具体的には、画像認識、音声認識、異常検知、自然言語処理、予測検索などの技術が総務部門の業務に応用される可能性があります。
例えば、画像認識技術は、備品管理やオフィス内の修繕箇所の特定に役立つでしょう。
スマートフォンの顔認証システムなどが、この技術の一例です。
一方、音声認識技術は、議事録の作成や多言語によるコミュニケーション、文書入力の効率化に利用されるかもしれません。
「Siri」や「Googleアシスタント」が音声認識の身近な例です。
さらに、自然言語処理技術は、AIチャットボットを通じた問い合わせ対応、AI-OCRによる書類のデジタル化、AI検索システムによる情報検索の効率化に活用できます。
AI技術は総務部門の業務を変革し、作業効率を高めるとともに、コスト削減にも寄与すると期待されています。
代替が難しい業務
総務部門でAIに取って代わることが難しい主な業務としては、新規イベントの企画立案や未経験の問い合わせへの対応が挙げられます。
これらの業務は、これまでのデータに基づかない新しいアイデアの創出や、柔軟な対応を必要とするため、AIの能力を超えるものです。
また、AIは人間の感情や状況の雰囲気を理解することができないため、感覚や判断を要する問い合わせの適切な部署や担当者への振り分け、実際の物質を扱う物理的な書類整理なども、AIには適していません。
総務部門では、人間独自のコミュニケーション能力や判断力が求められる業務が多く存在します。
そのため、AIに完全に取って代わられる可能性は非常に低いと言えるでしょう。
総務部門は、企業運営の中核を担う部門です。
AI技術の進歩により、これらの業務がどのように変化し、さらに効率的かつ効果的になるのか、今後の動向が注目されます。
総務職員は、AIと共存し、新しい技術を取り入れながら、自らの業務を進化させていく必要があります。
これにより、総務部門はさらなる価値を企業にもたらすことができるでしょう。
最後に
このように、AI技術の発展は、総務部門の業務にも大きな影響を与える可能性があります。
総務部門の一部業務はAIによって代替される可能性がありますが、すべての業務がAIに置き換わるわけではありません。
総務部門においては、単純作業の自動化によって、総務職員の仕事内容が変化し、新たなスキルや知識が求められるようになるかもしれません。
しかしながら、人間ならではのコミュニケーション能力、信頼関係の構築、数値化できない細かな判断が必要な業務が多いため、AIの導入によるコスト削減や業務効率化を進めつつも、人間にしかできない業務に焦点を当てることが重要です。
今後のビジネス環境において、AIと人間が共存し、それぞれの強みを活かしながら、より効率的で効果的な総務業務の運営を目指すことが、大きな課題となるでしょう。
また、総務部門の業務プロセスの効率化や精度向上に寄与する可能性もあります。このように、AIの進展は総務部門に新たなチャンスと課題をもたらすと考えられます。
総務職員にとっては、AIの導入を機に、自身のスキルをアップグレードし、変化する職場環境に適応することが重要になるでしょう。
