「営業事務として働いていますが、多忙すぎて体力的にも精神的にも疲れ果てています。月末や月初は締め切りが迫り、残業が増えてしまいます。」
「いくら努力しても、事務職での経験が自分のキャリアに役立っていると感じることができません。将来を考えたとき、他の職種に転職した方が良いのではないかと考え始めています。」
このような疑問や不安に対して、本記事では解決策を提案します。
私は日頃から営業事務の方々と頻繁にコミニケーションを図り、その業務とも関わっているので、その困難さや評価される人物の特性を十分に理解しています。
営業事務は、一般的なオフィスワークとは異なり、特定の業務やプロジェクトに対する事務作業が主な内容です。
会社によって業務範囲は異なりますが、典型的な業務は以下のようなものがあります。
- データリストの作成
- 見積もりの作成
- ライセンス契約の見積もり
- 口座開設と契約処理
- 注文の受注と発注管理
- 顧客情報のシステムへの登録
- 月末月初の文書作成
- 請求書の作成と配送
- 契約書の整理
- 財務管理
- 荷物の受け取りと発送
- 電話対応
- 来客対応
他の事務職は総務や管理部門に所属し、次のような業務を担当します。
- 備品の管理
- 名刺の管理
- イベントの告知と運営
- オフィス環境の改善
場合によっては、一般事務と営業事務、あるいは経理業務を兼務することもあります。
営業事務はどの会社にも必要とされますが、業務量が多く、常に多忙です。
さらに、他の部署と比較して目立たないことも多いため、キャリア形成に対する不安を抱える方も少なくありません。
多忙を極めつつもキャリアに繋がらないと感じると、将来への不安は一層大きくなるでしょう。
そこで、本記事では以下の点について説明します。
●事務職の多忙さにどう対処するか
●事務職の経験がキャリアにどう繋がるか
●事務職からのキャリアチェンジの可能性
●キャリアチェンジを考える際のおすすめの職種
結論として、事務職が辛い場合、タスク整理やスケジュール管理を上手く行うことで、業務を効率的に進めることができます。
また、資格取得もキャリアアップには役立ちますが、それ以上に日々の業務の進め方を工夫することが重要です。
ただし、事務職での経験が直接的なキャリアアップに繋がることは少ないため、より良いキャリアを目指す場合は、職種を変えての転職がおすすめ!
本記事の後半では、事務職の業務を楽にする方法、キャリアチェンジ時のおすすめの職種、キャリアチェンジの方法について詳しく解説していますので、最後までお読みください。
営業事務の厳しさとその要因:7つのポイント
営業事務は細部にわたり広範囲に及び、その量は圧倒的です。
営業事務の厳しさを感じる主な7つの要因は以下の通りです。
- 絶えず忙しい
- 月末月初は残業が集中する
- フルタイムのリモートワークが実現しにくい
- ミスが許されない厳しい環境
- 基礎的なコミュニケーション能力が必須
- 社内での立場が弱い
- 給与アップが期待しにくい
これらの理由から、事務業務は合わない人には特に辛く感じられることがあります。
理由①絶えず忙しい
営業事務業務の厳しさの一つ目は、絶えず忙しいことです。
業務量は多岐にわたり、以下のようなタスクが含まれます。
・顧客リストの作成
・正確な見積もりの作成
・ライセンスの見積もり
・口座開設と契約の手続き
・注文の受注・発注管理
・顧客データのシステムへの登録
・月末月初の納品書・請求書の作成と送付
・契約書の整理と捺印
・支払いと入金の管理
・荷物の受け取りと発送
・電話応対
・来客対応
これらのタスクは一つ一つが複雑というわけではありませんが、全体としての量が多く、特に間接部門では人手を容易に増やすことが難しく、業務負担が大きくなりがちです。
営業や開発部門と比べて事務職は増員が難しく、業務量が増えても減ることは少ないのが現状です。
加えて、急な要求や緊急のタスクへの対応も多く、次のようなシナリオが頻繁に発生します。
・急ぎの納品手配
・夕方に受けた契約書の変更依頼
・短期間での手配要求
予測できない要求が多く、常に多忙であることが大きな厳しさとなっています。
理由②月末月初は残業が集中する
次に挙げられるのは、月末月初が特に忙しく、残業が多くなることです。
これは「絶えず忙しい」にも関連しますが、月末月初は納品書や請求業務が集中し、業務の締め切りに追われるため、残業が避けられない状況になります。
場合によっては、一人で多くの請求処理を行うこともあります。
この時期は、小さな請求処理も一つ一つ慎重に行う必要があり、夜遅くまでの作業が一般的です。
間違いは許されないため、速さと正確さが求められる厳しい時期です。
理由③フルタイムのリモートワークが実現しにくい
三つ目の理由は、フルタイムのリモートワークが実現しにくいことです。
新型コロナウイルスの影響でリモートワークが普及しましたが、営業事務業務には以下のような業務があり、完全に自宅からだけで行うことは難しいです。
・契約書原本の製本処理
・押印処理
・伝票の確認
・会社への荷物受け取り
・荷物の発送
これらの業務は会社の設備や物理的な書類が必要なため、最低週に一回は出社する必要があります。
他部署と比べて、フルタイムのリモートワークが難しく、場合によっては定期的な出社が必要になることもあります。
紙ベースの処理が多い場合、出社しないと仕事が進まないこともあります。
理由④ミスが許されない厳しい環境
営業事務職が厳しいとされる四つ目の理由は、ミスが許されない厳格な環境にあります。
事務作業では、誤りは極力許されず、特に見積もりや請求処理などは会社の信用に直結するため、細心の注意が求められます。
さらに、タスクを迅速に進めなければならないため、常に高いプレッシャーの下で作業することになります。
事務職では、ミスがないのが当然と見なされ、完璧な仕事が期待されます。
一方で、ミスが発生した場合、それは大きなマイナス評価に直結します。
他部門では小さなミスから学び成長することが許される場合もありますが、事務職ではそのような余地がほとんど許されません。
理由⑤基礎的なコミュニケーション能力が必須
営業事務が厳しいとされる五つ目の理由は、基本的なコミュニケーション能力の必要性です。
一般的なオフィスワークでは、指示されたタスクをこなすことが中心ですが、営業事務ではそうはいきません。
営業担当者、法務部門、顧客との頻繁なやり取りが必要であり、それぞれに適切なコミュニケーションが求められます。
納品書の送付、請求書の送付、書類返送の期限通知、返信のない顧客への催促など、顧客との直接的なコミュニケーションが発生します。
さらに、社内の関連部門との調整も日常的に必要であり、円滑なコミュニケーションが不可欠です。
理由⑥社内での立場が弱い
営業事務が厳しいとされる六つ目の理由は、社内での立場の不安定さです。
営業事務は多くが間接部門に所属し、外部との接点が少ない内勤業務を主に担当します。
そのため、会社の風土によっては、直接収益に貢献する部門の従業員と比較して、社内での立場が低く見られがちです。
仕事の要求が無視されたり、雑に扱われたり、適切な評価が得られないこともあります。
営業や開発部門と比較して目立たないため、ストレスや不満の原因となることも少なくありません。
理由⑦給与アップが期待しづらい
営業事務が厳しいとされる七つ目の理由は、給与の上昇が期待しづらいことです。
営業事務は会社の直接的な収益に貢献することが少なく、評価されにくい傾向にあります。
営業や技術部門など直接的な利益に貢献する部門と比較すると、給与の上昇幅は限られがちです。
給与は生活を支える重要な要素ですが、低いままではモチベーションの維持や将来への投資が困難となります。
給与の上昇が期待しにくい職種では、長期的な視点で見ても、満足感や充実感を得ることが難しいという側面があります。
営業事務のキャリアパスとその困難性:2つの主要な理由
営業事務は、その困難さだけでなく、長期間従事してもキャリアパスとしての価値が低いと見なされることがしばしばあります。
営業事務がキャリアパスとして困難であるとされる主な2つの理由は次の通りです。
【評価を得ることが難しい】
【業務が自動化ツールによって置き換えられるリスク】
これらの理由により、事務職は更に厳しいと感じられ、多くの人が悩みを抱える原因となっています。
理由①評価を得ることが難しい
営業事務がキャリアパスとして困難とされる最初の理由は、適切な評価を得ることが難しいという点です。
営業事務では、長年にわたる勤務でも担当する業務の範囲が大きく変わらないため、確実に業務を遂行することが期待されています。
これは、スキルや経験を積んでも、担当できる業務の範囲が拡大しないということを意味します。
営業職や開発職など他の職種では、商談成功や新しいビジネスモデルの開発など、個人の業務範囲の拡大が評価につながります。
開発者であれば新技術の習得やプロジェクト成功が評価されるように、技術力の向上が直接的な評価に結びつきます。
しかし、営業事務では長期間勤務しても「業務を確実にこなせる」という評価に留まりがちで、キャリアパスとしての評価を得る機会が限られています。
多年勤めても社内外で評価されるキャリアを築くのが困難なのが現状です。
理由②業務が自動化ツールによって置き換えられるリスク
事務職がキャリアパスとして困難とされるもう一つの理由は、業務が自動化ツールによって置き換えられる可能性があることです。
定型的な業務が多い事務職では、請求書の発行や納品書の作成など、自動化しやすいルーチンワークが多く存在します。
RPA(ロボティックプロセスオートメーション)などの技術進歩によって、従来は人の手によって行われていた作業が自動化されつつあります。
もちろん、全ての業務が自動化されるわけではありませんが、時間の経過と共に自動化される業務の範囲は拡大しています。
自動化されると、残された業務は専門性が高く複雑なものになる可能性がありますが、同時に全体の業務量が減少し、職が不安定になるリスクも伴います。
突然の配置変更やリストラの対象になる可能性も否定できません。
経験を積んでも業務が自動化によって失われる可能性があるため、事務職はキャリアパスとしての価値が低いとされています。
RPAについてはこれらの記事も参考にして下さい
営業事務業務の負担を軽減するためのアプローチ【負担を感じている方へ】
営業事務業務の重圧を感じている方には、業務を効率化し負担を減らす対策をお勧めします。
業務負担を軽減するための主な3つの戦略は以下の通り。
【タスクの効率化】
【スケジュールの最適化】
【コミュニケーションの充実】
これらの方法を取り入れることで、作業効率を向上させることができます。
方法①タスクの効率化
営業事務業務の負担を軽減する第一の方法は、タスクを効率的に整理することです。
営業事務業務は多岐にわたり、量も多くなりがちです。
どのタスクをいつまでに完了させる必要があるかを明確にし、それぞれのタスクに優先順位を設けることが重要です。
効率的なタスク管理により、締切の見落としや不要な残業を避けることができます。
方法②スケジュールの最適化
次に有効なのは、スケジュール管理を最適化することです。
予期せぬ緊急事項が生じやすい事務業務では、「急ぎの見積もり作成」や「即時の口座開設手続き」など、迅速な対応が求められます。
そこで、スケジュールには常に余裕を持たせ、突然の要求にも柔軟に対応できるように計画することが肝心です。
余裕を持ったスケジュールを組むことで、急な要求にも効率よく対応し、業務のストレスを軽減することが可能となります。
方法③コミュニケーションの充実
最後に、関係者とのコミュニケーションを強化することも重要です。
営業事務業務は営業担当者をはじめとする他のスタッフとの連携が不可欠です。
担当者との密なコミュニケーションにより、相互のニーズや期待を明確にし、誤解や衝突を未然に防ぐことができます。
契約書の精査や締結日の調整、文書の発送計画など、事前に確認や調整を行うことで業務がスムーズに進むようになります。
また、定期的に情報交換を行い、互いの作業状況や計画を理解し合うことも、効率的な業務遂行に繋がります。
資格取得の重要性とその優先順位についての考慮事項
営業事務業務の効率化を目指して資格取得を考えている方もいるかもしれませんが、実際には資格が業務効率化に大きく寄与するとは限らないことがしばしばあります。
特に、Microsoft Office Specialist(MOS)資格のようにWord、Excel、PowerPointの操作スキルを証明するものは、事務業務において一定の効率化をもたらすかもしれません。
確かにこれらのソフトウェアの習得は事務作業のスピードアップに寄与しますが、それだけで大幅な作業軽減に繋がるわけではありません。特に、営業チームとの協調が求められる業務においては、単なるソフトウェア操作能力を超えた、チーム内のコミュニケーションやタスク管理能力が重要になります。
営業チームとの良好な連携がなければ、いくらソフトウェア操作が得意でも、業務はスムーズには進まないでしょう。
不適切な情報共有や確認不足によるミスは業務効率を低下させるだけでなく、チーム内の信頼を損なう可能性もあります。
そのため、資格取得に注力するよりも、次のような日常業務における基本的なスキルの向上がより重要です。
- タスクの優先順位を明確に設定し、迅速に処理できる能力
- 書類発送やデータ入力などの細かい業務を正確に遂行する能力
- 営業チームと綿密に連携し、独断で動かないようにする
- 営業チームの要望を予測し、不足している情報を積極的に補う
信頼される事務職員になるためには、これらの実務スキルを鍛えることが最も重要です。
資格は補助的なツールと考え、業務で必要とされるスキルの向上に日々努めましょう。
営業事務職からのキャリアチェンジへの道筋【キャリアアップを目指す方へ】
営業事務は専門技能をあまり必要としないため、他職種への転職が難しいケースもあります。
長期間営業事務に従事すると、キャリアアップの道が見えにくくなることも少なくありません。
仕事に疑問を感じ、より多くを学び、成長できるキャリアを目指す方には、積極的にキャリアチェンジを検討することを推奨します。
特に、資格取得に力を入れるよりも、新しい職種への転職の方が、キャリアアップに結びつく可能性が高まります。
ビジネス環境の変動による突然の配置転換がある中で、自らキャリアチェンジを選択することで、自分のキャリアを自己管理し、より充実した職務に就くことが可能です。
また、事務職そのものが苦手であると感じている場合にも、新しい職種への転職は解決策の一つになります。
営業事務職から転職を考えている方は、特に市場で需要の高い職種に目を向けることが肝心です。とりわけ、次のようなIT関連の職種がおすすめです。
- ITエンジニア(システムエンジニアやプログラマー)
- デジタルマーケティングの専門家
- ウェブデザイナー
これらの職種に移るためには、転職前に新しいスキルや知識を身につけることが重要ですが、現代は学習機会が豊富にあり、あらゆる年代で新たなスキルを習得可能な環境が整っています。
キャリアスクールやオンラインコースを活用し、効率的に学習し、職種変更を実現させましょう。
さらに、コミュニケーション能力に自信があり、営業職に興味があるなら、営業職への転職も一つの選択肢です。
ただし、事務職と営業職は業務内容が大きく異なり、営業職は多くの挑戦と厳しさが伴います。
そのため、営業職への転職を検討する際には、インサイドセールスやカスタマーサポートといった比較的入りやすい職種から始めることを推奨します。
もし企業内に人事異動の制度があるなら、まずは社内での異動を検討するのも良いでしょう。
社内異動が難しい場合は、新しい会社への転職を通じてキャリアチェンジを図るのが望ましいです。
まとめ:営業事務の負担を感じている方への転職を推奨
これまでの議論をまとめてみましょう。事務職、特に営業事務は多くの方にとって重い負担となりがちで、その将来性やキャリアパスに疑問を持つことは珍しくありません。
営業事務の負担は主に以下の7つの要因によって引き起こされます。
・業務量の過多
・月末月初に集中する残業
・リモートワークの制約
・ミスへの許容の低さ
・求められるコミュニケーションスキル
・社内での立場の不安定さ
・給与上昇の見込みの低さ
また、営業事務がキャリアパスとして魅力に欠けるとされる主な理由は、評価を得にくい性質と、自動化ツールによる仕事の置き換えリスクの2点です。
負担を減らすための方法としては、タスクの整理、スケジュールの管理、関係者とのコミュニケーション強化が効果的です。
しかし、営業事務でなかなか手に職をつけるのが難しく、キャリアアップの道が狭いと感じる場合、転職によるキャリアチェンジが有効な手段となります。
特に、需要が高いIT関連職種への転職は、多くの年齢層で活発に行われています。
営業事務職での経験を活かしながら新たなスキルを身につけ、より充実したキャリアを目指すことを推奨します。
営業事務職も重要な職種であることに変わりはありませんが、自身のキャリアと将来を見据え、より可能性のある道を模索することが大切です。
新たなステップを踏み出し、充実した職業生活を実現するために、キャリアチェンジを検討してみてください。